2011年 3月11日の東日本大震災では、地震の大きさもさることながら、広範囲で起こった津波の被害によって東北地方を中心に多くの被害が生じました。多くの尊い人命が失われただけでなく、町や村や家が津波で壊滅したところもあり、多くの歴史的文化的な資料も喪失することになりました。千葉県でも、旭市などで津波の被害を受け、利根川沿いあるいは江戸湾岸の埋め立て地では、広範囲で液状化現象が起こりました。
このようななかで、東北地方では、宮城歴史資料保全ネットワークを中心に、すぐに被災地の状況についての情報が伝えられましたし、新潟歴史資料救済ネットワークでもそれに呼応するかのように情報を伝えました。岩手でも、山形でも、福島でも「史料ネット」が活動を開始し、それぞれ活動内容は異なるものの、広く情報を交換できるようになっています。神奈川でも茨城でも、同様の動きが急速に進んでいます。阪神淡路大震災をきっかけに組織された「歴史資料ネットワーク」(神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター)が中心となって始めてきた全国各地の「史料ネット」の双方向的なネットワークの構築は、緊急時の歴史資料保全(救済)活動を支える大きな力になっています。このなかで、地域住民と一緒になった日常的な地域の歴史資料の確認・保存・活用活動がいかに重要か、についても明らかになり始めています。
千葉県内でも、2004年の九十九里いわし博爆発事故へのレスキューの経験がきっかけとなって2009年に「千葉県文化財救済ネットワークシステム」(千葉県博物館協会地域振興委員会主導)が設立されており、県内の大学や研究機関などとの協力についても模索されてきました。しかし、今回のような津波を伴った大震災を経験するなかで、どこでどのような被害が出ているのか、わたしたちにできることはないのか、という点では、必ずしも十分な情報を共有することができませんでした。もちろん、全く手をこまねいていたわけではなく、わたしたちは、それぞれ、これまでに千葉県内の調査を行ってきた経験や人脈を生かして、情報を収集してきましたが、如何せん、それぞれの調査チームがばらばらに調査し、お互いに交流する機会はほとんどありませんでした。
今回の大震災を踏まえると、緊急時に千葉県内の自然(たとえば標本など)・歴史資料の被災状況についての情報を速やかに共有でき、必要な救済活動を実施することができるようにすることが、県内で様々な分野において資料の調査・研究に関わってきた者の責務だと考えます。全国的な資料ネットや博物館等の連携によるレスキュー状況を見ても、今回の東日本大震災で喪失したものは、古文書等の歴史資料をはじめ、歴史的建造物、民俗資料、考古資料、さらに、地域の博物館に収蔵されていた動植物標本などの自然資料と非常に多岐にわたっています。当然のことですが、緊急の事態では、それらを区別して救済することはできません。また、初動の情報収集と被害のなかった地域の資料ネットや有志個人への発信がいかに重要なのかがわかりました。
そこで、歴史・文化・自然資料に関わる県内外の研究者や関心のある市民が、立場や所属(職場)を越えて集い、情報や意見を交換し、いざというときの資料救済活動がスムースにできるようにするために、千葉歴史・自然資料救済ネットワーク(千葉資料救済ネット)を立ち上げることにいたしました。事務局は、当面の間、千葉大学文学部史学科研究室に置くことにしました。
別紙の「千葉歴史・自然資料救済ネットワーク(千葉資料救済ネット)申合せ」をご覧のうえ、このネットにご参加くださいますようお願い申し上げます。基本は個人での参加・登録といたしますが、団体での参加も歓迎いたします。
※この「立ち上げ文」は、2012年3月3日の発足集会で承認されました。
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