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古文書修補・研修日記33

2014年度最後の修補です。

前回クリーニングした3点の資料を裏打ちする作業を行いました。
その合間に、糊作りもしました。
今回は、鍋の周辺に付いて固くなってしまった糊を混ぜないよう(そういう糊を作らないよう)気をつけて作業しました。

新規の資料を2点いただき、そのうち1点について調査とクリーニングまで終えました。

作業の合間に、白井での修補活動ほど環境が整っていない場所で出来る、応急処置的な、簡易な修補について、横山先生とお話をさせていただきました。

私などは、個人のお宅や地域の公民館などで古文書を整理することがありますが、現地で「古文書を修補する」ことは時間的にも材料的にも、ほとんど不可能に近い、というのが現実です。
そもそも、個人が日常的に「修補作業をする」のも、道具を揃えるのはなかなか大変です。
けれど、「資料を保全する」という点で、最低限のケアをすることもできるのでは…と、2年間修補の研修を受けてみて、少し思うに至りました。
白井で行っている修補は、すべての資料において、まずクリーニングは必ず行います。その後、資料の状態に応じて「虫損直し」か「裏打ち」作業を行います。これらの作業をするために必要な道具として
・渋紙(最近はカッターマットを利用)
・ポリエステル紙
・レーヨン紙
・裏打ち紙(和紙)
・直し紙
・(乾燥用の)チップ紙
・糊
・刷毛その他
が必要となります(細かい道具は除きました)。
でも、作業をしてみると、資料をクリーニングをしてレーヨン紙にサンドし、乾燥させるだけで、資料は皺が伸び、かなりしっかりした状態になります。
「しわしわで、ほこりだらけの状態より、クリーニングした状態で写真撮影したり、解読したり、保管した方が、まだマシなのではないだろうか…」

横山先生にお話してみたところ、
「レーヨン紙を表だけ剥がして保管したらいいのでは?」
というご意見をいただき、「なるほど…」と思ったのですが、レーヨン紙の酸性度を(簡易な方法で)調べてみると、やや酸性が強いということがわかりました。
それならば、クリーニングした後、裏面はすぐに裏打ち紙を、表面にはレーヨン紙を使って乾燥させ、乾燥したら表のレーヨン紙だけ剥がして保管したらいいのでは、という結論に至りました(裏打ち紙は機械で作ったものでも中性からややアルカリ性であることがわかりました)。
この方法だと、資料一紙のままより丈夫で、糊を用意する必要がなく、また糊を使っていないので、いつでも裏打ち紙を剥がすことができます(糊を使っていても、剥がすのは難しいことではありませんが)。そして、クリーニングの方法さえマスターすれば、虫損直しや裏打ち作業よりは容易に、多くの人が作業にあたれるのではないかと思います。

個人でロール紙のレーヨン紙や裏打ち紙を揃えるのは決して楽ではありませんが、この方法は、試してみる価値があるのでは…と、思っています。白井での成果を自分なりに、少し形にできるように検討してみたいと思っています。

白井での研修も2年が過ぎましたが、資料館のご厚意で、また1年間継続して修補活動に参加させていただけることになりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
4月からも、このブログを続け、少しでも修補の方法を紹介していけたら…と思っています。拙い文章ですが、おつきあいいただけたら幸いです。
来月は4月8日から、また新年度スタートです。どうぞよろしくお願いいたします。
〈研修日:2015/3/25 後藤恵菜〉
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