千葉歴史・自然資料救済ネットワーク運営委員の後藤です。
すでにご存じのように、平成27年9月10日、関東から東北地方にかけて発生した豪雨で、千葉県に隣接する茨城県では、鬼怒川が決壊し、常総市がとくに甚大な水損被害を被りました。そのなかで、常総市役所に保管されていた行政文書も水損被害を受けたことがわかり、茨城史料ネットを中心に専門機関の関係者が集まって、水損資料の救援活動を行うことが決まりました。
千葉資料ネットも応援要請を受け、9月30日の初回活動から会員へ参加を呼びかけ、その活動は現在も続いています。
被害の大きさから、この救援活動は長期にわたることが予想されます。
救援活動から1ヶ月が経ちましたが、これまでどのような作業が行われてきたのか、個人の活動報告なのでごく限られた記述にはなりますが、参加を検討されている方の参考にもなればと思います。
被害を受けた行政文書は、永年文書庫(電動書架5本連結6段19列)と有期限文書庫(可動書架5本連結7段22列)に保管されていました【写真↓左】。地面から約90㎝の高さまで水没し、棚の半分が水没もしくは浸水の被害をうけました。

書庫のなかは狭いので、資料の保管位置を記録する係と取り出し係数名が班を作り、バケツリレー方式で資料を外に運び出します。運びだされた資料はコンテナに入れられ、1点ごとに番号を書いた紙を挿入する作業をしたあと、軽トラックに積み込んで仮保管場所に移動しました【写真↑】。
旧庁舎が作業場所として提供され、建物の3階に棚の1~3段目に配架されていた資料(水没もしくは浸水の被害を受けた資料)が、建物の2階に浸水を免れた4段目以降の資料が運び込まれました【写真↓】。資料の搬出と配置作業に10日ほどかかったのではないかと思います。

大きな地図類などは風通しのいい場所に干し、カビの発生が確認された資料はサンプル的にエタノール洗浄したあと、冷蔵庫で保存する処置を行いました【写真↑下2点】。
厚みのある資料や封筒に入った資料は、モノによってカビの発生が確認されました。

旧庁舎2階に運び込まれた、水損被害の少ない資料はそのまま自然乾燥をすすめることになりました。
3階に運び込まれた、水没もしくは浸水被害を受けた資料は、自然乾燥を進めながら、状態が酷い資料のエタノール洗浄を行い、その過程で、エタノール洗浄したあと自然乾燥で様子をみる資料と真空凍結乾燥にまわす資料に仕分ける作業を進めています。
エタノール洗浄は二人組で作業しています。75パーセント濃度にしたエタノール液に資料を浸す、もしくは刷毛などで汚れを落とす作業です。

自然乾燥させる資料は、洗浄したあと
①1点ごとキッチンペーパー(資料の状態に応じて不織布)に包み、
②ピンク色の紙に識別番号を転記し
③数点まとめて、キッチンペーパーでくるんだ段ボール板でサンドして、並べて乾燥させる
真空凍結乾燥にまわす資料は
①のあとビニール袋にいれ、
②オレンジ色の紙に識別番号を転記し
③もう一枚ビニール袋に入れ、
④10㎏ずつまとめて圧縮袋にいれてパッキングする(パッキングした資料番号を2枚メモし、1枚は一緒にパッキングし、1枚は保管)

資料の総点数はまだはっきりしませんが、1万点はくだらない分量です。これから冬場に向かうとはいえ、カビの繁殖を防ぐ作業は時間との闘いです。当面、資料を整形しながら乾燥させる作業、エタノール洗浄作業が続くものと思われます。
11月から、常総市が、常駐して作業にあたる方を雇用することになりました。毎日作業できる体制が整いつつありますが、この膨大な資料の洗浄・乾燥にはやはり人手が必要です。千葉資料ネットでも、細々と、息長く協力できればと思っています。

現在の3階の様子
※写真の掲載にあたっては、常総市の許可を得ました。
〈文責:後藤恵菜〉
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