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古文書修補・研修日記85

石巻市のクリーニング資料は、四苦八苦しながら終盤にさしかかってきました。
一番劣化の酷い資料が最後に残してあったのですが、和紙が非常に脆く、文字通り四苦八苦しています。

修補でお預かりした資料は表紙・裏表紙がつき、和綴じされた版本です。
資料を解体すると、表紙・裏表紙のなかから「芯紙」(=「アンコ」とも呼ばれている厚紙。表紙の厚みだしとして入れるものです)がでてきます。
芯紙は反古紙を再利用したものが多く、丈夫にするために小さく裁断した和紙の断片や髪の毛などを混ぜ込んで漉き直したものが使われます。

今回の修補で、表紙・裏表紙の本紙と芯紙は新しいものに替えますが、これまで使われていたものもクリーニングと裏打ちの処置だけはして、石巻にお返しする予定です。そのため、最後の1冊に使われていた芯紙のクリーニングと裏打ちの作業をさせていただきました。
縮小(芯紙)
再利用で漉き直した紙であるせいか、紙は灰色です。そのうえ厚みがあるので、汚れた海水を存分に吸ったのでしょう、クリーニングをすると、ひときわ汚れた水が出てきました…。とくに虫損直しはせず、「これが表紙に使われていた芯紙です」ということがわかる程度の処置をしました。

古文書の修補は、技術さえ積めば「どんなものでも直せる」と思われているかもしれません。どこに穴があったか、裂損があったかわからないほど見事に、新品のように直せる、と誤解されているかもしれません。もちろん、限りなくそれに近いことができる技術を持った方はいらっしゃると思いますが、それには本当に熟練した腕と、十分な時間と、適した豊富な材料が必要です。
白井で修補にあたっているスタッフの方々の技術も素晴らしいと思います。
それでも、「完璧な修補」はあり得ない。
修補でできることは、今以上の劣化を少しだけ食い止めること、だと思います。
可能な範囲で汚れを落とし、虫損直しや裏打ちで弱った部分を補強する。その措置によって、資料の寿命が少し延びる。そういうことだと思います。

被災した資料は、見た目よりはるかに弱っていて、修補している先から、墨が壊れていくものもあります。
本来、膠(にかわ)を混ぜて作られた江戸時代の墨は、しっかり和紙に染みこんで、水で濡らしたくらいではほとんど落ちることがありません。それが、今回修補している石巻の資料は、クリーニングしたあとのポリエステル紙を剥がすと、劣化の酷い場所では墨がポリエステルについてきてしまうのです。
その原因が海水による化学変化なのか、今回の版本に使用されていた墨のせいなのかわかりません。
細心の注意をはらって資料に取り組んでも、ちょっとした力加減で文字が壊れてしまう…とても怖い経験をしています。

それでも、今の技術でできる精一杯の作業をして、現状を維持できるくらいの形になればと思います。
今まで使われていた表紙や芯紙も、被災の傷跡の一つとして、被災の歴史として残すことが大事だと思います。

〈研修日:2016/10/12 後藤恵菜〉
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