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古文書修補・研修日記86

石巻で被災した資料の修補作業は、版本の表紙・裏表紙を裏打ちする作業に入りました。
スタッフ全員が1~2枚の表紙を分担しました。

私は2冊目の版本の裏表紙を裏打ちすることになりました。写真では無地のようにみえますが、花の模様が浮き出るように押してあります。下の写真の右側がその裏表紙です。上下と右側に折りたたみ分が残っていますが、綴じてあった部分は欠損しています(左側)。右側に綴じ穴がないので、この欠けたほうが綴じ目だとわかります。
真ん中の細長い茶色の和紙は、裏表紙の左右を補強するための足し紙にします。そして、裏表紙と似たような色の和紙を用意し(これは横山先生が全冊分、色を確認して、できるだけ本紙に近いものを用意してくださいました)、裏打ち紙とします。また、表紙として丈夫にするため、厚みだし用の、かなり厚めの和紙を2枚用意しました。
DSC00254縮小
先ほど用意した表紙の左右に足す「足し紙」を、欠損の形にあわせてざっくり裂いて使います(写真↓)。DSC00257縮小
私が割り当てられた表紙は欠損が少なく、虫損もほとんどないのですが、みかけとは全然違って、この和紙も非常に脆くなっていました。これまでの作業と同じく、一度水で濡らしたらもう動かすことはできない代物です。

固糊よりやや緩めた糊で、表紙が乾いた状態で欠損部分を埋めていきました。
いわゆる「虫損直し」と同じ状態です。
虫損直しが終わった時点で、やはりどうしても埋めた箇所が攣れてしまうので、いつも通り、刷毛で軽く湿りを加え、表紙を伸ばします。

そのあと、表紙の裏全面に糊をかけ、裏打ち用の茶色い和紙を貼り、さらに厚み出し用の和紙を2枚、重ねて貼っていきます。
厚みだしの和紙ように厚みがあるものを貼るときは、その和紙にも軽く湿りを加えてから本紙に重ねるといいそうです。厚みだしの和紙が乾燥していると、本紙の水分や糊を乾いた方が吸い取ってしまうのです。
これまでの経験を考えればわかりそうなことでしたが、「難しい資料を扱っている…」という緊張感で頭が働かず、「厚い紙はむずかしいなぁ…」と力任せに本紙と厚みだし用和紙を貼り付けていた私です…。無事に圧着してくれていることを願います。

他ののスタッフさんは、私の扱った資料よりはるかに難しい状態(下が欠けていたり、上下が不明だったり…)の表紙を扱って悪戦苦闘しながらも、淡々と作業をこなしていました。

白井市の文化祭行事が始まる関係で、今日の作業をもって、白井での修補作業は一ヶ月ほどお休みとなり、次回は12月7日からとなります。
12月はおそらく製本に向けての作業になると思いますが、自分の直した資料がどの程度きれいに仕上がっているか…。非常に気になります。1ヶ月のブランクがすぐ取り戻せるといいのですが…。

〈研修日:2016/10/19 後藤恵菜〉
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