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古文書修補・研修日記97

今年度最後の研修です。
前回の続きで、「虫損不開」という類の資料を開き、修補する作業に取り組んでいます。
虫損甚大で、紙自体が弱いため、「ふのり」を使うことにしました。

下記上段のような状態の資料を、慎重に広げポリエステル紙でサンドし、湿りを加えて伸ばします。
ポリエステル紙は一度湿らせ、余分な水気をとっておき、その上に資料を乗せます。ポリエステルの水気が多いと、資料を置いた時点で紙同士が吸着してしまい動かせなくなるので、余分な水気はしっかりとり、資料もふんわり置いて、資料を動かせる(調整できる)余地を残しておきます。

「ふのり」を作ります。
「タタミイワシ」のような状態の「ふのり」の塊を適量ネットに入れ、小鍋に水を入れ熱したら「ふのり」を入れ、煮出します。
2_20170403145835fb6.jpg
「ふのり」が熱いうちに、ポリエステルで挟んだ資料に、ポリエステル越しに刷毛で「ふのり」をかけます。資料の表裏両方に「ふのり」をかけます。

この後、すぐに通常の薄糊を塗り、虫損直しをして裏打ち紙→乾燥、という方法もありますが、今回は虫損が大きいので、一度「ふのり」をかけた資料を乾燥させ、そのあと必要な足し紙を用意して虫損直しする段取りをとることにしました。
「ふのり」をかけた資料はポリエステルで挟んだまま、厚めのポリエステルでさらにサンドし、段ボール紙で挟んだらベニヤ板のみの重さで乾燥させます。

なお、「ふのり」を使う効能をまとめます。
「ふのり」は、浴衣などを洗い張りするときに使います(生地がピンと張ります)。
今回の資料や、水でふやけてしまった資料などを修補するとき「ふのり」を使うと、紙の繊維に「ふのり」が染みこんで、ふやけた繊維を落ち着かせることができます。
乾燥するとさらっとした状態になり、紙の扱いが容易になりますが、「ふのり」には接着の効果はありません。そのため、「ふのり」を使ったあとに、通常通りの薄糊をかける必要があります。

次回(4月12日)、「ふのり」で固定した資料を虫損直しし、裏打ち紙を貼って直していきます。

来年度も研修生として修補活動に参加できることになりました。
資料毎に修補の方法を替えながらなので、研修に終わりはない…と思います。
気持ちを新たに、丁寧な作業を心がけたいと思います。
来年度もよろしくお願いします。

〈研修日:2017/3/29 後藤恵菜〉
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