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栃木県茂木町某家・救援活動参加記

先日、栃木県茂木町で行われた資料レスキューの参加記を、後藤恵菜さんが寄せてくださいました。

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茨城史料ネットからの案内を受け、7月22日(日)に、栃木県茂木町某家の資料救援活動に参加しました。茨城ネットからの事前情報にあるとおり、某家は元禄期から続く茂木町の旧家で、近江商人として酒造業を営んできましたが、東日本大震災で被災し、残された歴史資料は家屋・敷地とともに茂木町の所有となりました。
 
今回は、取り壊されることになった2棟の土蔵から歴史資料・民具・調度品などが一時保管場所に移されることになり、そのお手伝いとして、初日は50名ほどのボランティアが集まりました。
 前回参加した福島県勿来の救援活動と同じように、茨城史料ネット(事務局)により、参加者がそれぞれ蔵の現状記録班、資料運搬班、蔵から運び出された資料の記録班などに分けられ、作業をすることになりました。
 私はA蔵の現状記録班になりましたが、A蔵の資料はほとんど2階に集中しており、配置された人員では多すぎたため、階下で写真撮影用の番号札を書いたり(記入例:「某家A蔵2階東1」)、資料の運び出しを手伝ったりしました。
 勿来の救援活動と同様に、作業内容は作業の進捗状況によってどんどん変わっていきます。午後の後半は、蔵から運び出し、記録と梱包をした資料が作業場でいっぱいになってきたため、資料を一時保管場所(廃校になった小学校)に運ぶ作業を手伝いました。茨城ネット・栃木ネット(今回の救援活動を機に結成されました)が用意した車に梱包された資料と一緒に何人かが乗り込み、某家から10分ほど離れた小学校に運びます。その小学校は山の中腹にあり、駐車場から小学校の昇降口まで建物1階分の階段を上り、そこからさらに半階あがった教室に資料を運びこんでいきます。平行移動には台車を使えますが、基本的には人力で運ばなければなりません。なかなかの重労働でした。
 
この作業で非常に勉強になったことをご紹介します。
 二つの蔵から運び出された資料は、蔵ごとに教室を分けて搬入します。たとえば、1年1組の教室をA蔵の資料、1年2組の教室をB蔵の資料、というようにです。そのあと教室ごとに、蔵から運び出すときに付けられた「番号札」の記録をとり(1年1組の教室:某家A蔵2階東1、西4…というように)、教室内を東西南北と「中央」に分け、資料を単位ごとに置き直すのです。つまり、蔵のなかにあった状態を(並べ方は別ですが)再現するのです。
 蔵から作業場(記録とクリーニング・梱包をする)へ移すときには現状記録が作成されており、おそらく、作業場からこの一時保管場所へ移すときにも、どの資料を移動させるか(移動させたか)という記録がされているのだと思います。そして、一時保管場所でもどの資料が届いているか、きちんと記録をとる。「記録をとる」ことが徹底されています。
 私も個人のお宅で史料調査・史料整理をすることがありますが、原則としては現地で作業をすることにしています。そのため、これほど「何重にもわたる記録」をすることは、まずありません。レスキューの場合は、一時的にせよ史料を「移す」ために、また不測の事態を避けるために、このような「記録」を何重にもとるのでしょうが、この作業は所蔵者にとっては非常に安心感・信頼感を与えることになるでしょう。
 
今回のように、震災からある程度の時間が経過し、多少の余裕がある中での作業とはいえ、丁寧な作業を心がけることは非常に大事だと思いました。また、記録する「字」も、できるだけ丁寧に書く。記録する情報もできるだけ正確に書く。当たり前のことですが、様々な人が参加する場所だからこそ、誰にでも読める字、誰にでもわかる情報を、正確に残す、伝える事が重要だと思いました。
 いざ災害に直面し、急を要するときであっても、急を要するときだからこそ、丁寧で確実な仕事が求められるでしょう。
 そのためには、救援活動にかぎらず、日頃の史料調査のときから、丁寧で確実な仕事を心がけること、そして、たくさんの人に、たくさんの経験を積んでいただければ…と改めて思いました。緊急のときには、本来の力はなかなか発揮できないかもしれない。どのような状況が待ち受けているかまったくわかりません。何かしたいとという気持ちはあっても、実際は思ったようには動けないかもしれない。それでも日頃の経験の積み重ねが、自分を助け、史料を助けることになるかもしれない。そう思った一日でした。

今回も全力で幹事をしてくださった茨城ネットのみなさん、栃木ネットのみなさんに心から感謝いたします。

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