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第2回勉強会「古文書修補の実習」参加記

2012年12月9日に行われた第2回勉強会について、睦沢町立歴史民俗資料館の
山口さんが参加記を寄せてくださいました。作業のポイントがよく分かります。



千葉歴史・自然資料救済ネット
第2回勉強会「古文書修補の実習」(講師 横山謙次氏)

1.概要
(1)渋紙の渋抜き
渋紙の渋抜きはお湯か水で行う。渋が出てきたら水を交換して渋が出なくなるまで繰り返す。その後、干して乾燥させる。

(2)糊の作り方
修補には可逆性のある糊を用いる。ここでは保存のきく小麦粉を使う。小麦粉に徐々に水を加え、ダマにならぬようにゆっくりとかきまわす。最初は高温の火にかける。高温でないと、糊化せず、粘りの無い糊になってしまう。鍋を逆さにしても落ちない粘度になればできあがり。その後冷まして保存する。

(3)虫損の穴埋め
文書の厚さを測り、同じ厚さや色の紙を選択する。紙の繊維を出しながら虫損の大きさにあわせてちぎり置く。

(4)修補で使う道具の説明
糊作りに使う鍋から様々な種類の和紙まで、修補に使用する道具を使いやすさや価格まで説明。

(5)和紙の特性
和紙は裂きやすい方向とそうでない方向がある。実際に和紙を使って、和紙を小さくちぎる練習をする。

(6)ヘラの持ち方
大きな動作をするとき、糊をつけるとき、糊を捏ねるときのヘラの持ち方の練習。

2.感想
古文書修補の実習では、見学だけの内容かと思ったが、実際に成田山霊光館の文書に触れる機会を得た。実習生が行ったのは、虫損の穴埋めであった。和紙を虫損の大きさに合わせてちぎる作業だけでも、和紙が自分の思い通りにちぎれるはずもなく、苦戦した。
 修補する文書とちぎった和紙の厚さがでこぼこにならぬように行うが、実際の仕上がりはそうならず、虫損の穴埋めの技術の中にも、技術やコツがある。糊の作り方やヘラの持ち方にも、家庭で経験したことの延長線上にある。人生無駄なことは何もないよ、なんて言葉を耳にするが、糊を捏ねる作業は餡練りや葛練りに似ているし、ヘラの扱いは障子の張り替えに似ていた。
長年研鑽を積まれた横山先生の糊の作り方は、ヘラを持つ手の位置を水平にしたまま糊を捏ねるという神業。家庭で料理をする人は、これがどんなにすごいことかわかると思う。
私が所属する睦沢町立歴史民俗資料館では中世の古文書は少なく、多くの文書が明治・大正・昭和初期にかけてのものである。廃棄される前に救出してきた資料も多く、資料状態は良いものばかりではない。横山先生が「修補が難しい紙」として挙げられていた「酸化した紙」「ふやけた紙」が多い。
近世文書よりも近現代文書を多く所蔵している館は、当館だけではないと思う。救済現場で、そのような古文書が出てきたらどのような作業を行わなければならないのだろうか。古文書修補の実習を通して、考えていくべきだと思う。
(山口 文)

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