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古文書修補・研修日記11

今日から、新規の「状モノ」の修補に入ります。

資料の調査は前回終了しているのですが、調査の方法については、「研修日記9」で紹介していますので、そちらをご覧ください。ちょっと補足をすると、資料調査の前には、資料館の職員さん(学芸員さん)によって、現状写真が撮られています。そして、クリーニング・裏打ち作業等が終わって裁断する前(冊モノなどは綴じる前)に、いい状態で写真を撮っておきます。

今日は、その調査に基づき、まずポリエステル紙とレーヨン紙の準備=裁断から始めます。今回の資料は虫損が酷くなかったので、クリーニング作業=資料の水洗いと、虫損の穴埋めだけを行います。そのため、「裏打ち紙」は使いません。資料は2枚に剥離しているので、修補する資料の縦・横に3センチを足した大きさ(上下・左右で各1.5センチほどの余白)のポリエステル紙とレーヨン紙をそれぞれ2枚ずつ用意します。

カッターマットにポリエステル紙を置き、水を含んだ刷毛で広げます。きれいに広げたら、余分な水分は取り除きます。
最初は資料の裏面を上にして置き、刷毛を使って水をかけていきます(写真左)。
決してムリに広げることはせず、資料が浮くように、たっぷりの水を含ませてから、その上にもう一枚のポリエステル紙を載せ、刷毛で中心から上下・左右に、ポリエステル越しに資料を伸ばして、水をはき出していきます(写真中央)。資料には直接触らないので、資料を傷める危険は少なくなります。
その後、余分な水分をタオルなどで吸いとります(写真左)。
クリーニング3

これがクリーニング作業なのですが、ポリエステル紙越しにはき出した水を集めると、下の写真のようになります。水洗いだけですが、一見綺麗に(白く)みえる資料でも、結構汚れていることがわかります。
汚れ

この後、ポリエステルごと裏返し、上になったポリエステル紙を一度はがして、資料のめくれている箇所などを直します。資料の表面が上になっています。
再度ポリエステル紙を載せ、水をたっぷり含ませた刷毛で、資料の表面もクリーニングします。中心から外に水をはき出します。

タオルで余分な水分をとったあと、ポリエステル紙をはがし、レーヨン紙を載せます。レーヨン紙をしっかり貼り付けると、乾燥する段階で、資料に残った余分な汚れをレーヨン紙が吸いとってくれます。ただ、レーヨン紙はポリエステル紙より伸びやすい性質があるので、濡れた資料に載せて平らに広げるのは、結構難しいです。

この状態で、再度、裏・表をひっくり返します。資料の裏面が再度上になります。
ポリエステル紙を剥がし、裏面のめくれを直したあと、レーヨン紙を載せます。資料がレーヨン紙によってサンドされた状態になります。

厚紙で資料をサンドし、ベニヤ板を載せ、「おもし」をします。厚紙が余分な水分を吸収します。厚紙を3回ほど取り替えながら、乾燥させていきます。

この乾燥に半日ほどかかるので、修補スタッフの皆さんは、いくつかの修補資料を平行して直していきます。
私も、この「状モノ」資料を乾燥させるあいだに、新たに「竪冊」資料をお預かりし、午後は調査作業を行いました。

ちなみに、今回の「状モノ」は墨一色でしたが、ときどき朱印が押してあったり、朱書きがあったりする資料が出てくることがあります。そのときは、クリーニングをする前に、濡らした綿棒でその箇所を軽く叩いて、色落ちするかどうかを確かめます。もし色落ちをする場合は、画材で使われる色落ちを留めるスプレーを使って、その場所だけ色落ちを防ぐ処置をします。

次回は、「虫損直し」をする予定です。「裏打ち」をしないでの、使用する糊の固さが変わるみたいです。
《研修日:2014/07/12》

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